研磨とは

研磨とは加工法の1つで、表面を磨いて仕上げるものです。研磨というと金属を磨くように思われがちですが、実はプラスチックや石、木などを使った製品にも用いられます。石や木の場合は表面を滑らかにして光沢を出し、見た目を良くする目的で使われることが多く、墓石や木製の工芸品などに使われます。研磨加工とはどのようなもので、どのような種類があり、どんな手順で行われるのでしょうか。研磨加工全般について見てみましょう。

研磨加工とは

金属は、硬くて衝撃に強いのがメリットで、多くの製品に使われています。しかし、硬くて強いために、加工しにくいというデメリットもあります。また、金属の表面には、目で見てもわからないくらいの凸凹が無数にあるため、製品の用途によっては、研磨によってこの凸凹をなくすことも重要です。そこで必要になるのが研磨加工なのです。

また、最近では光学素子や半導体素子、磁気デバイス素子などのハイテク機器部品の製造にも、研磨技術が不可欠なものとなっています。研磨とは、簡単に言うと砥石を高速で回転させて、研磨する製品の表面に当てて磨いていく作業です。ハイテク部品などの高い精度が求められる製品や、見た目の光沢が重要視される製品の場合は、ミクロン単位の研磨が行われます。

研磨加工の種類

研磨加工にはどのような種類があるのでしょうか。

砥石研磨

グラインダーと呼ばれる高速回転する砥石に、研磨する製品を当てて表面を磨く工法です。固定した砥石に、製品を当てて研磨するのも砥石研磨と呼ばれるので、包丁を砥石で研ぐのも砥石研磨の1つです。

ラッピング研磨

ラップ盤という台の上に置いた製品を、研磨剤を使って擦り合わせて研磨する工法で、研磨剤に含まれる砥粒が動くことによって研磨するので、遊離砥粒加工法とも呼ばれます。高速回転するラップ盤に、製品の表面を押し当てて研磨するので表面が滑らかになり、精度の高い研磨ができるため、鏡のような光沢を出す研磨に利用されます。

ポリシング研磨(バフ研磨・ステンレス磨き)

ラッピング研磨と同様に、遊離砥粒方式を採用した研磨方法にポリシング研磨があります。どちらも高いの圧力をかけて、砥粒を使って研磨工具と研磨する製品を動かすことによって、製品の表面に研磨工具の形状をなぞらえる加工法です。ラッピング研磨とポリシング研磨の違いは、ラッピング研磨が硬いラップ盤を使うのに対して、ポリシング研磨では、フェルトなどの柔らかい素材を使う点です。

ラッピング研磨よりも、ポリシング研磨のほうが粒子の細かい砥粒を使用するので、さらに滑らかでツヤのある鏡面に仕上がります。ポリシング研磨には、遊離砥粒ポリシング方式と固定砥粒ポリシング方式があり、それぞれがさらにいくつかの研磨法に分かれます。

バレル研磨

容器の中に研磨剤と研磨する製品を複数個入れ、振動させたり回転させたりして、製品どうしをぶつけて研磨する工法です。大量生産が可能なので、コストが安くなるのがメリットです。あまり質の高い研磨はできませんが、バリ取りができれば良いというレベルの研磨に多く使われます。

電解研磨

研磨する製品を電解研磨液に入れて電流を流し、表面を溶かして研磨する工法です。電気分解すると、表面の凸部が溶解しやすいので早くきれいに仕上がります。精度の高い研磨ができる上に、表面が複雑な構造で他の研磨法では研磨できない場合でも、平面と同じように研磨することができます。ただし、どんな金属でも研磨できるわけではなく、コストが高いのも難点です。

研磨の手順

研磨加工は4つの工程に分類されます。

1.下地

まず、下地の段階では大きな凹凸を取り除きます。大まかな作業に見えますが、この工程は非常に重要で、下地をしっかり行わないときれいな仕上がりになりません。下地に使う砥石は、番手が小さい粗い目の砥石を使用します。このように、下地では大まかに削っていく作業だけを行います。

2.ならし

下地の工程が終わって、ある程度製品の表面が滑らかになったら、今度はならしの工程です。ざらざらした表面を文字どおりならしていくのがこの作業です。下地の砥石より細かい砥石を使って研磨します。ならしが終わると、見た目にはほとんど平らに見えるほど研磨されています。

3.つや出し

下地とならしの工程で、ほとんどの凸凹がなくなりました。つや出しは、凸凹がなくなった製品の表面につやを出す工程です。つやを出すのは表面をきれいに見せるためですが、この工程は同時に鏡面仕上げの前段階でもあります。ならしの工程では表面の凸凹をならしただけなので、つや出しでは凸凹をならした際に表面についた汚れを取り除きます。

そのため、使用する砥石はならしよりも目が細かいものです。多くの場合、つや出しは鏡面仕上げの前段階の工程となりますが、製品によっては鏡面仕上げを行わない場合もあります。鏡面仕上げを行わないケースの中には、バイブレーション研磨やヘアライン加工のように、あえて表面に傷をつける研磨法もあります。

4.鏡面仕上げ

研磨した製品の表面を、鏡のように仕上げる工程です。つや出しをしたあとの最終工程が鏡面仕上げですが、つやが出ていればそれほど難しくはありません。砥石は目が細かいものを使いますが、砥石ではなく研磨剤を使うバフ仕上げもあります。

研磨剤の種類

研磨剤には、用途に応じていろんな種類があります。研磨剤は研磨する製品に合ったものを使わないと、研磨どころか表面を傷つける恐れもあるので注意が必要です。研磨剤は大きく4つの種類に分けられます。

ダイヤモンド

もっとも硬い物質なので、研磨剤として最適の素材ですが、価格が高いのでそれほど多く使われません。

立方晶窒化ホウ素

窒素とホウ素の化合物で、ダイヤモンドの次に硬い研磨剤です。また、ダイヤモンドよりも熱に強いので幅広く利用されています。しかし、コストもダイヤモンドに次いで高いので、大量に使用するのは困難です。

炭化ケイ素

炭素とケイ素の化合物で、炭素が含まれるのでかなりの硬さがあります。黒色炭化ケイ素と緑色炭化ケイ素があり、黒色炭化はアルミや銅などの非鉄金属、緑色炭化は石やガラスなどの非金属の研磨に適しています。

酸化アルミニウム(III)

コランダムという鉱石として知られる物質です。地中から採石されるので、天然の研磨剤として古くから使われてきました。褐色アルミナ、白色アルミナ、ジルコニアなどの種類があります。

研磨加工で水を使う理由

金属を切削加工する場合は、切削油を使って切削面の発熱を抑えます。しかし、砥石を使って研磨する場合は、切削油ではなく水を使って冷却します。これは、切削加工に比べて研磨の場合は砥石の回転が遅いため、水だけでも十分に冷却できるからです。また、研磨が終わったあとは、油より水のほうが簡単に拭き取れる上に、コストが安いのも理由の1つでしょう。ただし、鏡面仕上げの工程では、つやを出すために固形油性研磨剤を使います。

まとめ

研磨とは、主に金属の表面を磨き上げる工程のことを指しますが、石や木などの製品を磨くこともできます。研磨とは砥石を高速で回転させて、製品の表面に当てて削っていく作業です。高い精度が求められたり表面に光沢を出す場合は、ミクロン単位の研磨が行われることもあります。

研磨加工には砥石研磨、ラッピング研磨、ポリシング研磨、バレル研磨、電解研磨などがあります。研磨の工程には下地、ならし、つや出し、鏡面仕上げの4つの段階があり、研磨剤にはダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、炭化ケイ素、酸化アルミニウム(III)などがあります。